
Dorian
地の文のための文芸バリトン
声のカテゴリー
オーディオブックが1人読みなのが標準なのは、フルキャストを雇うのが高いからであって、読者がそちらを好むからではありません。CastDubは、いま手元にある原稿から、本物のキャストのある版を1人で作れるようにします。地の文にナレーター、登場人物ひとりひとりに違う声を。
聴き手はフルキャストの作品を1人読みより一貫して高く評価し、出版社はめったに作りません。キャストはスタジオ時間と日程と費用を掛け算するからです。1人読みが既定になっているのは、好みではなく経済です。キャスト版の見積もりを取ったことのある個人作家なら、数字がどれだけ早く成立しなくなるかを正確に知っています。
芝居を生成すると、その制約が変わります。キャストはナレーター1人と同じ費用なので、判断は純粋に編集上のものになります。この本は、声が分かれていることで良くなるか。会話の多い小説ならほぼ必ず「はい」ですし、群像のファンタジーなら強く「はい」です。8人の登場人物を耳だけで追うのがつらい、というのはまさに読者が言っていることだからです。
手間の大半を吸い取るものが3つあります。読みの確認。造語や珍しい名前のある本では避けられません。キャスティング。ゆっくりやる価値があります。ナレーターを間違えると作品全体が毒されるからです。そして試聴。全部の章を等倍で実際に聴くことで、みんなが飛ばして、あとで後悔する工程です。
本当に消えたのは、録音と再録音の往復です。9章の誤字を直すのは以前は追加収録を意味しました。いまは1行の作り直しです。この1点の変化が、もともと音声の専門家ではない人にとって、個人制作のオーディオブックを成立させています。
日本のオーディオブック市場には、さらに固有の事情があります。読み上げの伝統が朗読の側にあって、聴き手の耳が「きれいに読むこと」に対して厳しい。1人の朗読者が全員を演じる形が長く標準だったぶん、キャストを分けた版はまだ珍しく、そこに差をつける余地が残っています。同時に、漢字の読みの誤りに対する許容度は非常に低い。英語の原稿なら数か所の読み間違いは流せますが、日本語では1か所で信用が落ちます。読みの確認の工程を軽く見ないでください。
章を、あらゆることの最小単位として扱ってください。生成、確認、版の管理、修正。どの章がどの段階にあるかの簡単な記録をつけること。40章の本では、状態を頭の中に保つのは本当に難しく、そして確認し忘れた1章こそ、聴き手が見つける章だからです。
キャスティングは章をまたいで同一であるべきですが、キャラクターはある章のプロジェクトから次の章へは引き継がれません。だからキャスト表を作ってください。各キャラクターのライブラリのキャラクター、人物像、既定の感情を書き、毎回同じ順番で加え、書き出す前にナレーターの最初の行を聴きます。そうすれば31章が2章と一致します。3月に何を選んだかを誰も覚えていなくてもです。
合成ナレーションに対する市場の立場は速く動いていて、安全な姿勢は透明性だけです。表示してください。メタデータだけでなく、紹介文に書いてください。合成ナレーションで構わない読者はどのみち買いますし、構う読者は1章目で気づいていたはずです。
開示には作りの上での理屈もあります。正しい期待を設定できるからです。何を聴いているか知っている聴き手は、それを正しい基準——明瞭で、ぶれがなく、よくキャスティングされた朗読——で判断します。もともと目指していなかった芝居と比べられずに済みます。
紙の読者は視覚で位置を把握します。章の切れ目が見え、節の切れ目が見え、視点の変更が見えます。聴き手にはそれが一切ないので、構造を音声の側で運ばなければいけません。章見出しは独立した行にして、あとに本物の間を。場面の切り替えではもっと長い空白を。視点の変更には一貫した合図を。キャスト版なら、それはナレーターを替えるだけで済みます。
前付けには特に考える価値があります。オーディオブックの冒頭に置かれた長い献辞、題辞、謝辞は、聴き手が離脱する場所です。まだ何も気にかけていないからです。音声版の多くはそれらを末尾に移していますし、物語でないものは同じように扱う価値があります。日本語の本なら、縦書き特有の記号やルビの扱いも先に決めておいてください。ルビは読みの指定としては働かず、そのまま貼ると親文字とルビが両方読まれて二重になるので、読みのほうを本文に残してください。
公開する単位で作業してください。章は、編集後に作り直すのにちょうどいい大きさで、1回の視聴で確認するのにもちょうどいい大きさです。
ナレーターが再生時間の大半を背負います。いちばん密度の高い段落で試し聴きして、決める前に3分通して聴いてください。
自動キャスティングは地の文の中のかぎ括弧と引用の表現を検出するので、「と彼女は言った」が配役になります。外したものを直せば、直ったまま残ります。
人名、地名、造語を全部集めて、それぞれの読みを確認します。読みを指定する設定はないので、外すものは原稿の側でかなに開くか区切りを入れ、その一覧を全章で使います。ここでの20分が、後半の章の作り直しを防ぎます。
章ごとにプロジェクトを分けて1ファイルずつ書き出し、テキストと同期した版が欲しければPlusから字幕も。最後に配信先の仕様に合わせて組み立ててください。
生成音声の商用権は有料プランに付いてきます。特定の販売プラットフォームが合成ナレーションを受け付けるかどうかは別の問題で、答えは動いています。開示つきで受け入れるところが増えている一方、受け入れないところもあります。40時間ぶん作る前に、配信先の現在の規定を確認してください。
必要になりつつありますし、そうでなくても開示すべきです。合成ナレーションを認めている販売元の多くは表示を求めますし、購入後に気づいた聴き手は、想像どおりのレビューを書きます。
それがこのツールの目的そのものです。従来のオーディオブックは1人の読み手が全員を演じますが、ここでは各登場人物が本当に別の声なので、長い会話の場面が格段に追いやすくなります。
漢字の読みです。日本語の原稿では、人名と地名と造語の読みが一意に決まりません。「東雲」「小鳥遊」「陽菜」のような名前は、外側からは読めません。それに加えて、数字の読みも割れます。「一日」は「ついたち」か「いちにち」か、文脈次第です。読みの一覧を先に作ってください。日本語のオーディオブックで、作業時間のいちばん大きな塊はここです。
生成は速く、時間を食うのはキャスティングと読みの確認と試聴です。標準的な長編で、実作業は1日か2日を見てください。その大半は生成ではなく確認に使われます。
Plusです。日本語なら毎月およそ540分で、9時間ほどの完成音声にあたります。1行の読み間違いは、その行だけを作り直せば章全体を作り直す必要はありません。ただし章をもう一度書き出せば、その文字数ぶんクレジットをもう一度使います。
台本を貼り付ければ、CastDubが登場人物一人ひとりに声を割り当てます。あとは完成したボイスドラマを書き出すだけです。
無料で作ってみるクレジットカードは不要です。無料枠は一度きりの持ち分です。