ワークフロー

ノベルゲームのボイス制作

ノベルゲームは、ゲームのなかでいちばん割に合わない形をしています。膨大なセリフ量、プレイヤーが書いたもののごく一部しか聞かない分岐構造、そして全部に声をつけるなど考えられない予算。その形の問題の大半を、ここで引き受けます。1つだけやらないのは1行ごとのファイルを渡すことで、そこへたどり着く方法をこのページで説明します。

ここでうまくいく理由

セリフ量が制約でなくなる

中規模のノベルゲームでも、分岐を合わせると2万行に届くことがあります。これを収録でまかなうのは個人やインディーのチームにはほぼ不可能で、だから多くのノベルゲームはパートボイスか、ボイスなしで出ます。

話者ごとに別の声

話す役が十数人いるルートには、聴き分けられる声が十数必要です。1つのプロジェクトの中では、その言語の声を使い切るまで2人のキャラクターが同じ声になることはなく、あとからキャラクターを加えても、配役済みの誰かの声が動くことはありません。

字幕のタイムコードで切り出せる

SRT(Plusから)には1行ごとの開始と終了の時刻が入るので、ミックスをその時刻で切れば、行とファイルの対応を手で作らずに済みます。エンジンの行IDをファイル名にして1行ずつ書き出す機能は、いまはありません。

改稿が安い

ノベルゲームのシナリオはテスト中に絶えず変わります。作り直されるのは直した行だけで、変わった8行なら数秒です。収録の追加セッションなら1週間かかります。

この作り方に合う声

Ezra

Ezra

Visual-novel love interest with a two-second pause before honesty

男性青年アメリカ英語ノベルゲームやわらかい
Lumen

Lumen

VTuber persona: cute on top, deadpan underneath

女性青年アメリカ英語VTuberアニメ
Cass

Cass

Seventeen and furious about it, in a good way

女性10代アメリカ英語10代現代的
Seraphine

Seraphine

Court princess whose politeness is a weapon

女性青年イギリス英語王族ファンタジー
Koji

Koji

Rival character: clipped, competitive, secretly loyal

男性10代アメリカ英語アニメライバル
Tess

Tess

Australian lead with a flat, dry delivery

女性青年オーストラリア英語訛り淡々
Vex

Vex

Demon who negotiates in a reasonable tone

中性大人アメリカ英語魔族ホラー
Wren

Wren

Bedtime-story narrator, slow and warm, never wakes anyone up

女性大人アメリカ英語ナレーション温かい

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作り方

  1. セリフを話者つきで書き出す

    たいていのエンジンやシナリオ管理の表計算から、話者とセリフの並びを取り出せます。それを「名前:セリフ」の形のテキストにして貼り付けます(ファイルの取り込みはありません)。行IDの一覧は、同じ順番で手元に残しておきます。

  2. 話すキャラクター全員を配役する

    5行しかない役も含めて。どのプロジェクトでも同じライブラリのキャラクターと人物像を使い、書き出す前に主役の最初のセリフを聴いてください。新しいプロジェクトで同じ声に当たるとは限りません。

  3. プロジェクトはシーンの大きさに

    1プロジェクトに1シーン、または短いセリフのまとまり1つ。書き出しはそのたびにプロジェクト全体を数えるので、小さなプロジェクトほど行に切り分けやすく、書き出し直しも安く済みます。

  4. モノローグと発話を分ける

    ノベルゲームには主人公の心の声を語る地の文があることが多いです。それを主人公の発話と同じ帯域に置くと、プレイヤーは思考とセリフを取り違えます。はっきり違う声にするか、心の声は声なしにしてください。

  5. SRTで行を切り出す

    ミックスとSRT(Plusから)を書き出します。字幕の1項目が1行で、台本の順番に開始と終了の時刻が入っているので、短いスクリプトでMP3を切り分け、行IDの一覧からファイル名をつけられます。

  6. 変わったところだけ作り直す

    改稿したら、影響のある行だけを作り直します。変わっていない行の音声はそのまま残ります。そのあと書き出し直し、新しいSRTから切り出し直してください。直した行より後ろの行は、時刻がずれることがあるからです。

ジャンルを形づくった採算

ノベルゲームは、伝統としても必要としても文章が先に立つ形式です。声の収録が高く、セリフ量が膨大な市場で育ったので、パートボイスが慣習になりました。メインのルートには声をつけ、サブの内容は声なし、主人公は声なしにして、プレイヤーがその立場に入り込めるようにする。

日本では同時に、フルボイスが商業作品の売り文句になり、声優の名前がパッケージに並ぶ文化も育ちました。いまではパートボイスの慣習は採算の事情であると同時に美学でもあり、それを好むプレイヤーも多いのですが、下にある制約そのものは本当に変わりました。小さなチームでも、これまで声なしにするしかなかった部分に声をつけられます。たいていそれは本筋ではなく、サブルートと脇役です。

分岐は、見た目以上に一貫性を難しくする

一本道の物語は、順番どおりに一度だけ聞かれます。分岐のある物語は、順番を入れ替えて、何度も、しかも意図して比べながら聞かれます。2か月目に書いた行と9か月目に書いた行が、2周目を遊ぶ人の耳には続けて流れます。

だから声のぶれは、一本道のゲームよりはるかに目立ちます。誰かが配役を覚えていることに頼る仕組みは、いずれ必ず失敗します。ここではキャラクターが1つのプロジェクトの中にしか存在しないので、工程のルールは書き留めたキャスト表です。どのプロジェクトでも役ごとに同じライブラリのキャラクターと人物像を選び、同じ順番で加え、書き出す前に主要キャラクターの最初のセリフを聴く。新しいプロジェクトで同じ声に当たるとは限らないからです。

日本語で作るときは、声の数も意識してください。1つのプロジェクトで鳴らせる声は最大14種類、ja-JPのネイティブはそのうち2つだけで、40人のキャラクターの大半は最初の候補から多言語対応の声です。同じ声に当たるキャラクター同士が同じプロジェクトにいると、あとから加えたほうが別の声に回るので、ルートごとにプロジェクトを分けるなら、主要キャラクターの声が前のルートと同じかを最初に聴いて確かめてください。

エンジンの制作フローに生成の工程を組み込む

組み込みで現実に問題になるのは、ファイルの対応づけです。エンジンは音声をファイル名で参照するので、名前のそろっていない音声が返ってくるだけの工程は、作業を消したのではなく移しただけです。1行ごとのファイルは書き出せず、書き出しはプロジェクトごとのミックスMP3、Proのキャラクター別トラック、PlusからのSRTの3つなので、SRTのタイムコードで切り出し、スクリプトの行順と突き合わせてファイル名をつけるところまでを、一度スクリプトにしておくのが近道です。

2つめの問題は差分の作り直しです。変更のたびに全部を作り直すのは遅いうえにビルドを乱します。音声が作り直されるのは変わった行だけですが、書き出しはいつもプロジェクト全体が対象で、直した行より後ろの行は時刻がずれることがあります。プロジェクトを1シーンや短いまとまりに小さく分け、新しいSRTから切り出し直せば、書き出しにかかるクレジットも音声フォルダーの変化も、変わった範囲に収まります。

プレイヤーに、何を聴いているかを伝える

ノベルゲームの遊び手は、声の芝居に強い思い入れを持っています。声優がジャンルの文化のなかで目に見える、愛された存在だからです。その文脈で生成音声は中立ではなく、受け止め方は、チームが最初に正直だったかどうかに大きく左右されます。

ストアページに書いてください。どこが生成で、どこが収録か。これをするチームはおおむね出来で評価され、あとで見つかったチームは隠していたことで評価され、その評価はずっと厳しくなります。同人ゲームとして配布・販売するなら、AI音声の扱いについてプラットフォームの規約も先に確認してください。

パートボイスは設計の判断です

全部に声をつけられるようになったいま、面白い問いは、つけるべきかどうかに移ります。プレイヤーは声が話すより速く読みます。フルボイスのノベルゲームは読み手を待たせるか、音声を飛ばさせるかのどちらかで、後者なら声をつけた意味がありません。

うまくいく型は、芝居で良くなるところ、つまり感情の場面、キャラクターの初登場、ルートのクライマックスに声をつけ、つなぎの文章は声なしにして、読み手が自分のペースで進めるようにすることです。評価の高い商業作品にもこの形を採っているものは多く、予算のためではなく意図して選んでいます。

役に立つ見分け方があります。その行が情報を伝えるためにあるなら、声なしでいい。その情報についてキャラクターがどう感じているかを伝えるためにあるなら、声をつける。

テスト版と並走する

ノベルゲームのシナリオは、テスト中にほとんどのゲームの内容より大きく変わります。テストプレイヤーが読みにくい分岐を見つけ、書き手がすぐに書き直すからです。音声の工程がついてこられないと、それが直さない理由になってしまいます。考えうるいちばん悪い結果です。

これを成り立たせる性質が差分の作り直しです。8行変えたら、作り直されるのはその8行だけで、ほかの音声はそのまま。1行ごとのファイル書き出しはないので、ファイルは書き出したミックスをSRTのタイムコードで切って作ります。プロジェクトを1シーンか短いまとまりに収めておけば、書き出し直しと切り出し直しも小さく済み、音声フォルダーはビルド間で安定し、バージョン管理の差分も読みやすく、改稿が作り直しに見合うかどうかを誰も悩まなくて済みます。

この仕組みは、シナリオが書き終わったあとではなく、書き終わる前に整えておく価値があります。シナリオが固まるまで待つチームは、シナリオが決して固まらないことを知ることになります。

かかる費用

Free

US$0 / 月

 

お金を払う前に、自分の台本がキャストされた状態を聴いてみてください。

  • 生成と試聴はクレジットを使いません(24時間あたり30行まで)
  • ダウンロード用クレジット4,500(生涯で1回きり、完成音声およそ13分ぶん)
  • 40人のキャラクターボイスすべて。有料の壁はライブラリではありません
  • 1プロジェクトにつきキャスト2人
  • 個人・非商用のみ

Basic

US$5 / 月

 

ボイスライブラリを丸ごと開けて、完成した音源を持ち出しはじめる。

  • 40人のキャラクターボイスすべて
  • 毎月54,000クレジット(およそ160分)
  • 1プロジェクトにつきキャスト5人
  • 商用ライセンス付き

Plus

US$19 / 月

 

間を自分で決める。打ち明け話はゆっくり、口論は前のめりに。

  • 毎月180,000クレジット(およそ540分)
  • 行ごとの話速コントロール
  • 1プロジェクトのキャスト数は無制限
  • SRT字幕の書き出し

プラン比較を見る →

よくあるご質問

全部に声をつけるべきですか、主要な場面だけですか。

パートボイスは定着した慣習で、プレイヤーにもよく受け入れられています。共通ルートと感情の山場に声をつけ、細かいやり取りは声なし。フルボイスにする余裕はいまはありますが、それが作品のためになるかを考えてください。声のない行は速く読めますし、読み進めるプレイヤーは音声を待たずに済むことを喜びます。

AI音声だとプレイヤーは嫌がりますか。

嫌がる人はいますし、ノベルゲームの遊び手は声の芝居にほかのジャンルより強いこだわりを持っています。日本では声優がジャンルの文化の中心にいて、声優の側からも生成AIの無断利用に懸念が示されてきました。ストアページでの明記が正しい判断です。明記されていなかった生成音声があとで見つかったときの反発は、最初から書いてあった場合よりはるかに強くなります。

ティラノスクリプトやRen'Pyで使えますか。

プラグインも1行ごとのファイル書き出しもありませんが、流れには組み込めます。セリフを貼り付けて生成し、ミックスとSRTを書き出して、SRTのタイムコードでMP3を1行ずつに切り出し、エンジンのボイス指定が参照する名前をつけます。数行だけなら、短いまとまりごとに別のプロジェクトにするという手もあります。

主人公はどうすればいいですか。

多くのノベルゲームは、プレイヤーが自分を重ねられるように主人公を声なしにしています。美少女ゲームでも乙女ゲームでも、長く続く慣習です。主人公に声をつけるなら、心の声のモノローグと口に出したセリフをはっきり聴き分けられるようにしてください。話す速さを変えるか、ミックスで処理を変えます。

体験版だけ生成で作って、製品版は収録できますか。

できますし、理にかなった順番です。ボイスつきの体験版はクラウドファンディングの後押しになり、生成した音声はあとで声優さんへの演技の参考にもなります。その予定なら、体験版の声が仮であることをはっきり書いてください。

どのプランが必要ですか。

ノベルゲームに必要なキャスト無制限と、切り出しに使うSRTはPlusからです。ただし契約の前に分量を確かめてください。2万行を1行1.5秒と見ると完成音声でおよそ500分で、日本語ならPlusの毎月およそ540分ぶんにぎりぎり収まり、Proの毎月およそ1,350分ぶんなら余裕があります。実際の消費は書き出す文字数で数え(Plusは毎月180,000、Proは毎月450,000クレジット)、書き出し直すたびにまた数えるので、日本語のシナリオは総文字数に書き出し直しのぶんを足して見積もるのが確実です。多くのチームは1ルートか1章ずつ声をつけていて、それなら月々の枠に収まり、シナリオ全体が固まる前に試し聴きもできます。

今夜、最初の1シーンをキャスティング

台本を貼り付ければ、CastDubが登場人物一人ひとりに声を割り当てます。あとは完成したボイスドラマを書き出すだけです。

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